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Friday, April 23, 2021

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アジアのオープンアクセス シリーズ : 香港理工大学編

図書館員がオープンアクセス出版の支援に関する考えや、図書館のオープンアクセス目標に対するパンデミックの影響を共有してくれました。

最近の調査で、アジアの図書館員は、オープンアクセス出版における研究者のサポートが上位5つの目標の1つであると回答しています。オープンアクセスへの動きは、主に欧米の図書館員によって推進されていますが、アジアの図書館員は、研究コミュニティの進化する出版ニーズ、特にオープンアクセスにの対応方法を検討しています。

このインタビューシリーズでは、アジアにおけるオープンアクセスに対する図書館員の見解や、この地域の研究者をどのようにサポートしているかについて、読者の皆様と共有できればと考えています。本シリーズの第1回にご登場いただいた香港理工大学(The Hong Kong Polytechnic University)宝永図書館のジャニス・チア氏(Janice Chia)、ジョニー・ユエン氏(Johnny Yuen)、シンディ・ルイ氏(Cindy Lui )に、お礼を申し上げます。

Q: 香港では、図書館がオープンアクセス(OA)をサポートするための原動力は何だと思いますか?

助成金提供者からの要件(すなわち研究助成委員会(RGC) のオープンアクセス要件)は、香港におけるオープンアク セスを支援する最大の推進要因の 1 つです。RGCは最近、8つの大学のオープンアクセスロードマップに関して、彼らが配分した資金から生じる、すべての研究のオープンアクセスアーカイブとオープンデータを含むことを伝えました。それと引き換えに、私たちの図書館は大学と協力し、研究者が彼らの要求に応えられるようサポートしています。

香港ポリテック大学(HK PolyU)では、OAやOER(Open Educational Resources)のサポートが、2019/20~2024/25年度の全学的な戦略目標の一つとなっています。OERについては、本学図書館が、学生から推薦された、あるいは教員が作成したオープン教材リソースや、東学のブレンド型教育・学習をサポートする最新・最高のeラーニングリソースを、2019年に開設された香港ポリテック大学 OER Portal上で集め、整理しています。

Q: 貴機関の研究者は、ここ数年、オープンアクセスに対する関心を高めていますか?もしそうなら、それはなぜですか?

オープンアクセス出版の選択肢が増えたことで、より多くの研究者がOA出版を認識し、選択するようになりました。さらに、今後数年間のRGCのオープンアクセスに関するロードマップにより、当学および香港の研究者は、OA出版、オープンアクセスアーカイブ、オープンアクセスデータについてより深く認識するようになると予想しています。

Q: オープンアクセスの動きは欧米で顕著です。香港の図書館にもその動きは届いていますか?また、ここ数年、オープンアクセスの分野で貴館にどのような影響がありましたか?

米国やヨーロッパにおけるオープンサイエンスの経験を注意深く観察しながら、香港の図書館は、オープンな教育資源、オープンデータ、さまざまなオープンアクセス要件を満たすために、大学や学部を支援するさまざまな方法を模索しています。例えば、当機関の著者によるオープンアクセス出版を促進するために、出版社と「転換契約」や「オープン購読」を採用することが挙げられます。

Q: 現在、貴館ではオープンアクセス出版をどのようにサポートしていますか?

本学図書館では、OA出版やオープンアクセスアーカイブのニュアンスについての認識と理解を深めるための利用者教育を通じて、OA出版を支援しています。また、本学の研究者によるOA出版を促進するため、出版社との間で「転換契約」「オープン購読」を開始しました。

Q: COVID-19パンデミックは、オープンアクセスに関する貴館の目標に影響を及ぼしましたか?

COVID-19パンデミックとの戦いから分かるように、科学情報や研究データへのオープンアクセスは、これまで以上に重要なものとなっています。パンデミックによって、オープンアクセスの導入が加速され、認知度が高まったことは、出版社が研究や学習のために自社のリソースを無料で公開していることからも明らかです。図書館はそれらを集約したウェブページを作成し、利用者がこれらのリソースを利用できるようにしました。

Q: オープンアクセスにおける図書館の役割について、どのようにお考えですか?オープンアクセスのために図書館員の役割が変化しますか?またどのような形で変わりますか?

オープンアクセスやオープンサイエンスが重視されるようになり、本学でもこれらの分野の発展を支援し促進する新たな方法を模索する中で、図書館の役割は確実に変化していくでしょう。これらの分野をサポートするための図書館の役割は、各大学とその管理部門の戦略や優先順位に依存するため、機関によって異なるものとなるでしょう。

本学図書館は、大学の学習・研究におけるOA化のニーズに応えるとともに、「アクセス」から生まれるもの、例えば、学生から課題を募集し、それをどのように解決したか、OERからの産物が科目やカリキュラムとどのように関係しているかなどを把握・アーカイブ化することに努めています。利用者のローカルな知恵の集積が、やがて全学的な図書館支援の新しい形として成長していくと信じています。