私たちを取り巻く社会に変化をもたらすとはどういうことなのでしょうか?ノーベル賞受賞者のフレイザー・ストッダート氏(Sir Fraser Stoddart )をはじめとする研究者や専門家から、研究の影響力に関する見解を聞きました。
研究の影響がさまざまな方法で解釈できることは間違いありません。
しかし、韓国で初めて開催されたワイリー・インパクト・フォーラムで著名な研究者や専門家の話を聞いて、一つ明確になったことがあります。研究インパクトとは、あなたを取り巻く社会やコミュニティーに与える影響です。そして、複雑な科学的・社会的問題に取り組むには、勇気と革新的な思考が必要です。
大きな問題への取り組み
日常的なことを行うのに満足できないのであれば、取り組むべき大きな問題を特定し、研究において、新しい領域を効果的に開くことで自分の足跡を残すことが必要です」、 2016年ノーベル化学賞受賞者のフレーザー・ストッダート氏は、述べています。
そして、研究者に対しては、「解決できる20の問題をリストアップし、1から順番に番号を振っていくこと。その中で、一番大きな問題、一番難しい問題からリストアップし、それが自分が取り組むべき問題であると自分に言い聞かせるのです」と助言しました。
フレイザー氏は、先人の足跡をたどるのは簡単な道かもしれないが、研究者はより高いハードルを設定し、「大きな問題」への答えを明らかにするよう努力すべきだと強調しました。同時に、解決策を見つけることはリスクの高い道のりであり、研究者はバックアップ計画を確保するために、バックグラウンドで日常的な定常作業を行うようアドバイスしています。
忍耐は美徳である
解決すべき大きな問題を探す一方で、キャリアが浅い研究者は最初の助成金を得るという課題にも直面しなければなりません。「全世界で約90%の助成金申請が却下されています」とWileyの市場・出版分析担当ダイレクター イアン・ クレイグ氏は述べています。
KAISTのCafer T. Yavuz教授は、教育文化に由来する「すぐに結果を出す」という姿勢が、私たちに即効性を求めるようになったと説明しました。 「われわれは、試験勉強をしなさい、と言われ、試験を受け、その後すぐに試験結果が返却されてきました。今まではすぐに結果が出ましたが、研究はそううまくはいかないのです。」
研究費の多くは、すぐに結果が出るようなプロジェクトに与えられるため、若い研究者の焦りをさらに助長してしまうのです。この文化から脱却するためには、短期的で人気のあるプロジェクトではなく、基礎的で画期的な研究に対する、政府の恒久的な支援が必要です、とYavuz教授は主張しました。このやり方は、人類の歴史を変えて行くでしょう。
"役に立たない知識の有用性について" - ヘルムート・シュワルツ(Helmut Schwartz)
KAISTのキム・ソヨン教授(Prof. Soyoung Kimは、ヘルムート・シュワルツの言葉を引用し、「政府や機関は、必ずしもすぐに役立つものをもたらさない人々を支援する準備をしなければならない」と述べました。
助成金機関はしばしば研究の「役に立つ」側面に目を向け、これらのプロジェクトの多くが「役に立たない知識」から生まれたという事実を軽視しがちです。さらにキム教授は、最近の短期ベースの研究費の増加は、研究者の妨げになる可能性があると付け加えました。発見のタイミングは未知数であり、研究者には長期的な支援が必要です。
数字で評価する研究文化を変えましょう
「研究の質を見極める近道は、真に研究の質を判断すること以外にありません」と、Wileyの編集長であるアンドリュー・ムーア氏(Dr. Andrew Moore)は表現しています。政府や機関は、研究成果に基づいて研究者を評価し、ランク付けする方法を改善することで、研究者をよりよく支援することができるでしょう。
助成金機関は、研究成果の質を判断する近道として数値的な指標を用いるのではなく、指標の文化を変え、定量的ではなく定性的なものにするために、大きく貢献することができます。
馬、象、ミツバチから学ぶこと
フレイザー氏は、インパクト・フォーラムでの基調講演の最後に、成功への道は非常に長く困難であることを思い起こさせ、成功するために3つの種の資質を活用するようアドバイスしました。
馬並みの力を持つ – 馬のように強くなるためにしっかり食べ、体質を大切にしてください。
象並みの皮を被る – もし、あなたが創造的で新しいことをしようとするならば、あなたに向かってくる膨大な批判を受け止めることができる、象並みの厚い皮が必要でしょう。
ミツバチのような勤勉さ – 何かを発見したら、ミツバチのような勤勉さで、自分の強みをアピールしてください。
あなたにとって、研究の影響力とは何でしょうか?以下のコメント欄であなたの考えを共有してください。